NEWS
YATOの縁日2020
今年は昨年のようにお祭りの形では行わず、ワークショップに参加したこどもたちが作った影絵人形を使って、川村亘平斎さんが1人で影絵芝居を演じ、その様子を配信します。
YATOでは2018年、2019年と、「YATOの縁日」を開催してきました。
大人、こども、様々な世代がひとところに集い、出店や竹工作の屋台が出たり、演奏や影絵芝居の上演があったりと、思い思いに楽しめる空間の創出は、500年後まで続く人が集まる場(コモン)を考えるYATOプロジェクトにとって、いわば中心をなす活動と位置づけています。
2020年4月、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言が出される中、オンラインで行った定例会議で、私たちは縁日について話し合いました。
やるのかやらないのか、できるのかできないのかの話の前に、「YATOの縁日」とは何なのか、500年続く祭りとしての縁日は、何を祀ろうとしているのか、そんなことを話し合いました。
その中で自然と行き着いたのは、誰もが気軽に足を運べる催しとしての縁日は今年はできなくても、セレモニーとしての縁日は、途切れさせることなくやるのがいいのではないかということ。
昨年から始まった、こどもたちとのワークショップを経た影絵制作は、今年はオンラインと郵便のやり取りを通じて行い、こどもたちが作った影絵人形を使って、川村亘平斎さんが1人で影絵芝居を演じます。演じる物語は、簗田寺の裏庭にある龍王ヶ池に伝わる龍の伝説をモチーフにした物語です。
音楽は昨年に引き続き幸町バグパイプCLUB。
新たに始めた音のワークショップ「しずむおと」の演奏会で奏でた土器楽器の音も会場で流します。
また、spoken words projectが手がける会場装飾では、1枚の布が結界、衣装、影絵の幕など様々なものへと変身するような、1枚の布の可能性を拡げる試みが行われます。
またにぎやかに集える日を願いながら、今年はオンラインで、ぜひ「YATOの縁日」にご参加ください。
日時 | 2020年9月22日(火・祝) |
ライブ配信 | ■YouTube Live *YouTube Liveで配信した映像は、9月27日(日)23:59までご覧いただけます。
■Instagram Live *Instagram Liveは複数のアカウントから、多角的な視点で同時配信を予定しています。
※会場での一般公開は行いません。配信映像をお楽しみください。 |
出演等 | 影絵/川村亘平斎 |
お問い合わせ | |
主催 | 東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、社会福祉法人東香会 |
出演者プロフィール
川村亘平斎 影絵師・音楽家
https://www.kawamurakoheysai.com
1980年、東京生まれ。インドネシア共和国・バリ島に2年間滞在し、影絵人形芝居【ワヤン・クリット】と伝統打楽器【ガムラン】を学ぶ。世界各国で影絵と音楽のパフォーマンスを発表。日本各地でフィールドワークやワークショップを行い、土地に残る物語を影絵作品として再生させる活動が高く評価されている。絵本【おそなえきのみ】(’18)、シネマ歌舞伎「The DOGGY’s LOOK」影絵演出(’19) NHK Eテレ「こころの時代」影絵演出(’20)ほか、切り絵イラストやCMへの楽曲提供など幅広く活動している。ガムランを使った音楽ユニット【滞空時間】主宰。平成28年度第27回五島記念文化賞美術新人賞受賞。
幸町バグパイプCLUB
2018年初夏に結成。人々が混ざり合う場を、バグパイプと太鼓と餅つきを通して膨らませるクラブです。ロバの音楽座座長の松本雅隆を顧問に、【バグパイプ】田中馨、渡邉武俊、松本野々歩、齋藤紘良【太鼓叩き】内田武瑠【餅女】渡邉うづ、齋藤美和といったメンバーで活動中。
spoken words project
http://spokenwordsproject.com/
飛田正浩が主宰するファッションブランド。
1998年東京コレクションに初参加。
手作業を活かした染めやプリントを施した服づくりを行い、PUMAなど他ブランドとのコラボレーションや、芸術祭参加などその表現領域は多岐にわたりアパレルブランドの枠を越えて活躍中。
※本プロジェクトは「東京アートポイント計画」の一環として実施しています。
※プログラムは変更になる可能性があります。
REPORT
9月22日、2020年の「YATOの縁日」を開催しました。
こちらの記事にあるように、今年は一般観覧は行わず、無観客で影絵を上演しその様子をオンラインで配信しました。
こちらは前日準備の一コマ。
デリバリー影絵ワークショップに参加したこどもたちが作った影絵人形たちもスタンバイ中。今回50名近いこどもたちが参加してくれたのですが、1人2体、合計100体にものぼる影絵人形に、影絵師の川村亘平斎さんが一つ一つ棒を取り付けてくれています。ずらりと並ぶとまさに圧巻。
今回、演者の衣装と会場装飾を担当してくれたのはspoken words projectさん。
影絵を映し出す布は、掛ければスクリーンになり、身体にまとえば衣服にもなるというもの。
「影を映す媒体としての服(布)」という、アパレルの文脈ではあまりないであろうお題・シチュエーションに対して、ビーズやミラーのように光を反射する素材や、光を透過しない模様や刺繍がたくさん施された布が用いられ、光/影とのコラボレーションが楽しみです。
配信の準備も着々と。
メインのYouTubeは4つのカメラを切り替えて配信し、InstagramもYATO公式を始め5つのアカウントから同時配信。
演奏と影絵という並行して進む2つのシーンをどちらも見てもらうことに加え、影絵もスクリーン上で進行する物語だけではなく、その裏側まで見ることができたら面白いのではと考え、今回の配信スタイルとなりました。
幸町バグパイプCLUBのメンバーも、衣装に着替えて写真撮影。どことなく神話的な雰囲気。
影絵を演じる川村亘平斎さん。光と影、影と光、どちらが地でどちらが模様なのか。それぞれの間(あわい)が溶け合うような、不思議な雰囲気をもつ衣装です。
影絵に先立ち、幸町バグパイプCLUBのパフォーマンスが始まります。薄闇に響く、餅つきの音と「ぺったんこーぺったんこー」の掛け声。
最初に登場するのは、YATOのご意見番と自称する天狗。
龍王ヶ池に棲む龍女に守られているというこの谷戸の地では、最近荒天続きで村人が困り果てている。その原因は、龍女が授かった50匹の子龍たちが暴れまわっているからのよう。
お腹を空かせて暴れまわる50匹の子龍たちに頭を悩ませる龍女。作物が取れないためお供え物も尽き、ついには龍女が夜な夜な村に出て、人間のこどもをさらっていくようになってしまう。
村人の中から50人の強者が志願し龍たちと激しい戦いを交えるが、倒すには至らず、天狗は大山伯耆坊(おおやまほうきぼう)を訪ねて助けを請う。大山伯耆坊に子龍の1匹を隠され半狂乱になった龍女に、伯耆坊は東の地へ向かうことを提案する。龍たちが去り、鎮まった龍王ヶ池のほとりに村人たちは寺を建て、代々大切に守り続けた…というお話。
ワークショップに参加したこどもたちが作った人形は、龍のこどもたちとして、勇敢な村人たちとして、影絵のスクリーン上を駆け回りました。
上演時間は2時間に及び、終わる頃にはすっかり辺りは暗くなっていました。
2時間という長時間の上演を演じ切った川村さん、演奏し切った幸町バグパイプCLUBの皆さん、本当にお疲れさまでした。
たくさんのお客さまに、会場で見ていただくことは今年はできませんでしたが、その熱気は、電波に乗ってそれぞれの家庭に届いたのではないかと思います。
感染拡大回避というお題を受けてではあるものの、それがあったからこその新しい試みや、新鮮な出会いにあふれたYATOの縁日だったと感じています。