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谷戸の物語02 聞き書き ー朝の眼、夜の眼ー

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「谷戸の物語02」では、簗田寺の住職の奥さまである齋藤美智子さんに、40、50年前の忠生がどんな風だったのかお話を伺いました。ここではその聞き書きの一部を掲載します。

 

「谷戸の物語」について

谷戸の物語01 聞き書き ー水車ー

 

*ポストカード「谷戸の物語」の文章は、地域の方に聞いた話を元に執筆しています。制作にあたり行った聞き書きを、このウェブサイト上で紹介しています。

朝の眼、夜の眼

 

45年くらい前にここ(簗田寺)に嫁いできてまず驚いたのは、道がないことでした。あっても、本当に車輪がはまっちゃうような、車も通れないような道がお寺の前に1本だけあって、お寺の参道みたいなものと、幼稚園に上る道ぐらいしかなくて。私が生まれ育った秋田県では、大通りに住んでいたこともあって、こういう雰囲気を味わったことがなかったから、騙されたという感じで…(笑)そのときはなんだか寂しい気持ちでしたね。

 

でも、その代わりと言ったら変なんだけど、タヌキやらキジやら、動物たちが生活の中に現れてきて。強烈だったのはガマカエル。こどもの頭ぐらいあるようなカエルが、のっしのっしのっしって普通に目の前に出てきて。あと、子猫みたいなものすごく大きなネズミが物置きにいたりとか。本当にこのあたりは、山の中にポンと入ったような、鬱蒼としたところでした。

 

農家の方々がときどき来て話をしてくれる中では、狐の嫁入りみたいな火が出るとか、植えたお芋が全部なくなっちゃって、それはタヌキのせいだとか、ムジナのせいだとか、いろいろと動物たちが犯人にされていました(笑)。
私もムジナを実際には見たことはないのね。でも、タヌキみたいに、人を化かすんだって聞いていて。「あっちだよ」って言ってあっちに行くと、全然違ったりすると。

 

私も山の中に入ったときに、「こっちかな、あっちかな」とウロウロしたときに、なんとなく「そっちそっち」という感じがして行ってみると、そうじゃなかったりして。「実際にこういうことがあるんだな」という実体験なんだけど。深く入りすぎちゃったというか。空から見たら、本当にわずかな敷地の中でウロウロしてたというね。

 

 

台所に朝から晩まで立っていたんだけど、毎日必ず蛇口のところにちっちゃな緑ガエルが現れて。私が台所にいる間ずーっとそこにいたの。そのカエルさんと、「おはよう」って話したりして。この話だけでも、そこがどれだけ静かだったかということが想像つくと思うんですけど。

 

その後はこどもができて、どんどん賑やかになっていくので、そういう動物たちとの静かな期間は3〜4年ぐらいだったんだけど、私の中ではものすごく長い年月に感じます。

 

 

写真:波田野州平

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