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「500年の学校」 開催レポートvol.2(2025年2月〜4月)

2024年11月に開講した500年の学校。秋から冬、そして桜が花咲く春を迎え、早くも折り返し地点に到達しました。
冬の蓄えを春の芽吹きにつなげるように、受講生の皆さんは毎回多くの学びを吸収し、自分のこころと言葉で考えようとされています。
ここではvol.1につづき、「第4回」から「第6回」までの様子を、プログラムの内容や受講された皆さんの声を通して、日記を読むように感じていただけたらと思います。
Day4 2月2日(日) 色とりどりの問い、人生を分かち合う。
雪予報は外れ。静かな雨。
格別だという簗田寺の雪景色はまたいつかのお楽しみに 。この日は哲学者で作家の永井玲衣さんをお迎えして「哲学対話」を行いました。哲学対話とは、日常の中で生まれる「なぜ?どうして?」といった「問い」について、みんなで考え、聴き合う試みです。自分は何に囚われ、何に引っ掛かりを抱いているのか。
まずは自分と対話するように記憶を辿りながら、雨の境内を散策します。本堂に戻った後は、大きな輪になって座り、考えてみたい「問い」を出し合いみんなで一つに絞ります。問いの一つひとつ、その人が思わず立ち止まった生の体験や感情は、雨に濡れた木々の葉のように色とりどり。この日は「恥ずかしいって何だろう?」という問いについて考え合いました。人生の可笑しみや悲哀を受け止めつつ、お互いの語りを聞き合う時間は、いつまでも余韻となって心に響き渡ります。そして答えの無い「問い」そのものも、その日の大事なお土産になりました。
終了後、お寺の隣にあるカフェCONZEN COFFEEには受講生たちの賑やかな姿が。いつのまにか500年の学校に「放課後」が生まれていました。
<1日の流れ> am:今の気持ちを語る/境内の散策/問い出し(哲学者 永井玲衣)/昼食/pm:問い決めと哲学対話(哲学者 永井玲衣)/ふりかえり
Day5 3月2日(日) 食べるものを作る、生きる力を養う。
晴天。春の日差しが降り注ぐ。
簗田寺では梅が咲き誇り、あちらこちらから聞こえる鳥の鳴き声が春を告げるようです。この日は「食」をテーマに、料理家の野村友里さんと1日を過ごしました。まずは境内に自生するクレソンやセリを摘みに行き、杉の葉を拾い集めて火おこしを体験。里山や地元で採れた食材を中心に、おにぎりと味噌汁、副菜をみんなで協力しながら作りました。「自分のため」と「誰かのため」に1つずつ握ったおにぎりは、大きさも形も握り具合もばらばら。自由でおおらかなおにぎりに、思わず笑みがこぼれます。人生で初めておにぎりを握ったという受講生の方はとても嬉しそう。
料理をしながら伺ったのは、塩や海苔、鰹節、梅干しなどの身近な食材がどんな風に作られているのか、そして、それらを安全に持続的に作ることがいかに困難であるかというお話でした。目の前の食べ物がどのように作られているか過程が見えなくなっている現代において、どんな風に火を起こし、どんな風に食べ物を作るのかを原体験として知っておくことは、生きる力につながると友里さんは仰います。
まさに「同じ釜の飯を食べた」仲間となった私たち。木漏れ日の下でダイアローグをする皆さんの顔はぴかぴかと輝いて見えました。
<1日の流れ> am:今の気持ちを語る/坐禅/クレソン・セリ摘み、火おこし、昼食作り(料理家 野村友里)/昼食/pm:いま考えていることのお話(料理家 野村友里)/ダイアローグとふりかえり
Day6 4月2日(日) 生命の循環、自然のつながりを生きる。
晴天からの曇天、小雨、また晴天。
山門の桜は満開を迎え、そこかしこで花が咲き、生命を謳歌するような簗田寺の春。この日は共生革命家のソーヤー海さんと里山で焚き火を囲みながら1日を過ごし、パーマカルチャー、自然の豊かな循環に根ざした暮らしや生き方について学びました。
まずは全員で体調や心の状態を共有し、やるべきことからではなく、一人ひとりの生命のあり方から場を創っていきます。続いて各自が里山の好きな場所(呼ばれた場所)に行き、私たちと同じ生命をもつ木々や草花に「ここに居ていいですか?」と挨拶をしてから、静かに瞑想の時間を過ごしました。昼食は温かいスープと、竹に刺して焚き火で炙った香ばしいカンパーニュ。午後からはコンポストをテーマに生命の循環と生死の関係、循環を取り入れた暮らしの実践方法などを教わりました。
――「この世界はコンポスト、朽ちていく過程なんだ」
ソーヤーさんの言葉はまっすぐに心に響き、踏みしめた地面と、里山の木々が作る木漏れ日に挟まれて、私たちは紛れもなく自然の一部であり、その大きな循環のつながりの中にいるのだという、安心にも似た感情が湧き起こりました。ダイアローグの時間では、身近な人の生死を見つめる声が上がっていたのが印象的です。
<1日の流れ> am:朝のチェクイン/ディープエコロジー(呼ばれた場所で静かに過ごす瞑想タイム)/火おこし、昼食の準備/昼食/pm:コンポストについてのお話と実践/ダイアローグ *すべてのプログラムby共生革命家 ソーヤー海
第4回から第6回では、「人生の中の問い」「いのちを支える食」「自然の循環」など、自分自身や暮らし方、生き方を捉え直すための大切な学びを深めることができたように思います。受講生の皆さんも、活動や対話を通して、お互いに安心感を与え合う関係性を築いていらっしゃるようで、生き生きとしたとても良い表情をされています。
私たちの旅はまだまだ続きます。次回のレポートもお楽しみに。